内視鏡写真1
内視鏡写真2
65歳男性です。
2ヶ月前から固形物がつかえるため、上部消化管内視鏡検査を行いました。2ヶ月間に体重減少や黒色便はなかったそうです。
胸部中部食道に潰瘍形成病変(内視鏡写真1)とその下に潰瘍性病変と連続性のない隆起性病変(内視鏡写真2)を認めています。
どちらからも生検で扁平上皮癌を認めました。
CT, MRI検査で気管への癌の直接浸潤と反回神経リンパ節への転移を認めたため、手術は不可能と診断、放射線化学療法が施行されました。
日本人の食道癌は90%が扁平上皮癌で、10%がバレット食道腺癌です。 食道扁平上皮癌の危険因子は喫煙、飲酒です。喫煙者が食道癌を患う危険性は非喫煙者の約9倍、禁煙した人でも約4倍になります。
飲酒は、飲酒をすると顔が赤くなる(flusher), 以前は飲酒をすると顔が青くなったが今は赤くなる(former flusher)方はアルデヒド脱水酵素(ALDH2)の活性低下があり、要注意です。
食道癌は60歳以上の男性に多く発症し、男女比は5:1です。
この方のように体重減少や黒色便がなくても進行食道癌がみつかるので、危険因子のある方、つまり過去も含め喫煙をされたことがある、飲酒で顔が赤くなる、以前は酒が弱かったが飲酒を続けているうちに強くなった方は、少しでも喉や胸の違和感があるようなら医療機関を受診したほうがよいでしょう。