72歳女性です。
2013年2月よりお腹のはりを自覚していました。
近医で逆流性食道炎による症状と診断され、胃薬をもらっていました。
しかし、徐々にお腹のはりが強くなり、腹痛もでてきたため5月に当院を受診しました。
大腸内視鏡検査で盲腸に中心潰瘍を伴う易出血性の腫瘍を認め、生検で腺癌と診断されました。
腹腔鏡補助下盲腸切除、リンパ節郭清を行いました。
術後診断も盲腸癌で進行度はStageⅢb、術後に抗癌剤治療を半年併用してました。
2016年6月現在、再発なく、通院されています。
”お腹のはり”という訴えから想起できる病気のひとつに逆流性食道炎があります。
診断をするにあたっては、オッカムの剃刀という”一つの原因は観察されるすべての事象の源である”つまり、あらゆる症状をすべて説明できる病気をみつけろという格言があります。
近医での逆流性食道炎の診断もある意味正しかったのでしょう。
ただ、症状が胃薬で治らなかったときは別の病気が並存しているのでは?と考えることが重要です。
他に可能性がある病気として大腸癌、2型糖尿病などが頻度の高い疾患としてあげられました。
50歳以上の方はすでに一つ以上の病気をもっていることも多いため、ヒッカムの格言”どの患者も複数の疾患に罹患し得ること”を考慮し症状が治らないことを加味すると、逆流性食道炎以外に病気が隠れていないかと新たな臨床推論が必要になったケースでした。